皇族という「血のスペア」「かかし」と扱われる苦悩 成城大教授・森暢平

皇族という「血のスペア」「かかし」と扱われる苦悩 成城大教授・森暢平
7/23(火) 15:05配信
サンデー毎日×週刊エコノミストOnline
https://news.yahoo.co.jp/articles/07ab781bcfe44e3925f21a629403d3fb56789918

社会学的皇室ウォッチング!/121 これでいいのか「旧宮家養子案」―第23弾―

 現皇室典範での男子皇族の存在意義は、究極的には「血のスペア」、すなわち皇位継承予備者であることであろう。過去、多くの皇族がスペア(補充者)であることに悩んできた。旧宮家養子案は、苦しみから解放された家系にある人たちを苦悩の世界に再召喚するプランである。今回は、久邇宮邦彦を中心に戦前の皇族たちが、苦悩にどう向き合ったのかを考えてみる。(一部敬称略)

(中略)
 皇族は血のスペアである。しかし、それだけでは生きる意味がない。だから、意味を見出(みいだ)すために、主体的に行動したい。ところが、そうすると、宮内省から煙たがられる存在となる――。皇族は矛盾を抱えた存在だ。

◇苦悩を引き受ける旧皇族がいるのか

 その矛盾については、高松宮も日記に書いている。

 「日本が、万世一系の天皇の統(す)べたまう国であるために、その嗣継のために皇太子が必要であり、そのまた予備の人がほしいことも否定できないところであるが、しかし、無数無限の予備を意味しない」「生きていて、悪いことをしないのがスペアとしての全生命である」(『高松宮日記』1929年補遺欄)。皇族がロボットであることを拒否した高松宮は戦時中、盛んに政治的な動きをし、のちに昭和天皇から遠ざけられた。

 チャールズ英国王の次男ヘンリー王子の自伝『スペア』が発売されたのは昨年である。王室官僚は「ヘンリー皇子の継承順が5位や6位になれば、飛行機事故のときぐらいしか出番がなくなるだろう」と彼を話題にしていた。自伝にはそれに傷つく王子の屈折が描かれる。兄が子だくさんとなれば、兄一家全員が事故で亡くなったときぐらいしかヘンリーの継承可能性はないという意味である。

 今のままでは断絶する常陸宮家、三笠宮家、高円宮家の三つの宮家すべてに、旧宮家の男子の養子を入れる。場合によっては、すでに断絶した秩父宮、高松宮、桂宮を、養子によって復活させてもいい――。男系主義者たちはそんな案を語っている。

 市井で暮らす旧皇族の一部を、苦悩と葛藤と屈折の暮らしに引き戻すプランが本当に妥当であろうか。それ以前に、そもそも「かかし役」を引き受ける旧皇族がいるだろうか。

『久邇宮家関係書簡集―近代皇族と家令の世界』(吉川弘文館、2024年)を参照した。

<サンデー毎日8月4日号(7月23日発売)より、以下次号>
(完)



出番のない男系皇族の苦悩を綴った文章だが、(アイコ天皇論者が主張する)「長子相続ならば特に問題なく天皇制が続いていく」ことの証明になっていない。

長子相続のときの2番目、3番目の子は、「自分にはいつまでたっても出番がない」という同じ喪失感に苛まれるわけだがが、その悲劇・不運については何も考察していない。

どのように制度設計するにせよ、天皇に子ができない可能性は必ず残されるから、対策を典範に盛り込んでおかなければいけないのに、そうしない。

今後は天皇が同性婚またはトランス婚し、どこの馬の骨か分からない子を連れてきて「これが私たちの子です。この子を将来の天皇にします」と宣言するかもしれないが、日本の専門家、論客はこの種の新しい問題について一切考察せず、逃げている。

やはり天皇制は今のタイミングで廃絶してしまうのが一番問題なく、従って速やかに大統領制に移行すべきです。

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