ようやく「那須御用邸」にエアコン設置! 天皇陛下と皇后雅子さま、愛子さま滞在の「質素」な建物 湿気の傷みも心配

ようやく「那須御用邸」にエアコン設置! 天皇陛下と皇后雅子さま、愛子さま滞在の「質素」な建物 湿気の傷みも心配
7/27(土) 9:32配信
AERA dot.
https://news.yahoo.co.jp/articles/411893316482a8f9dfe1607a9770263b6f49ba4a

 天皇ご一家や皇族方が、夏のご静養に入る季節になった。ご静養先の一つが、「避暑地」として知られる栃木県・那須地域にある那須御用邸だ。しかし、築100年近い建物は老朽化が進んでいるうえに、これまでエアコンも設置されておらず、ご一家は「猛暑」を扇風機で乗り切ってきたという。心配した住民が「建て替え」を求めて署名活動をするほどだったが、ようやくエアコンの入った建物でご静養することができそうだ。

*   *   *

「以前、栃木県にある那須の御用邸に行き、その着いた晩に、縁側にあるソファーで寝てしまい、そのまま翌朝を迎えた、なんてこともございました」

 2022年3月、20歳の成年を迎えた天皇、皇后両陛下の長女、愛子さまは、那須御用邸での思い出をユーモアたっぷりに明かした。

 朝までうたたねしてしまうほど、穏やかな時間の流れる避暑地の那須御用邸。その敷地には、1926(大正15)年に当時皇太子だった昭和天皇のご静養のために建設された「本邸」と、昭和天皇がお子さま方のために1935年に建てた「附属邸」、休憩所である「嚶鳴亭(おうめいてい)」がある。昭和天皇の生物研究の拠点としての機能も備えた設計だったとされる。

 そんな由緒ある建物だが、本邸は建てられてから100年近く、附属邸も築80年を超えている。宮内庁によれば、現在、上皇ご夫妻が「本邸」、天皇ご一家が「附属邸」をお使いだという。

■気温30度超でもエアコンなし

 那須地域の農家でつくる「那須嚶鳴(おうめい)会」の前会長の市村利男さんは、上皇ご夫妻との懇談などのため、那須御用邸に何度も足を運んだことがある。

「窓の枠は木製。由緒ある建物とはいえ、まるで昭和初期の木造校舎の小学校のようでした。確かに昔は扇風機も要らないほど涼しい土地でしたが、全国で40度を超える酷暑日が増加する今、那須地域でも最高気温が30度を超えることも珍しくありません。なのに、エアコンも設置されておらず、日本の象徴である方が、これほど質素な建物に滞在なさっていることに驚きました」

 宮内庁によれば、耐震補強工事は本邸のみ、1998年に行われている。附属邸については耐震上の問題はないため、特に行われてはいない。

 適宜、修繕工事は行われているが、地元の住民が心配していたのは湿気による傷みだ。

「湿度が高いこの地域では、木造の建物は他の地域よりも傷みが激しくなる。地元の人間の多くは心配しています」(市村さん)

 老朽化した建物に対する不安の声が地元であがり、「那須嚶鳴会」が中心となって、2017年ごろから建て替えを求める署名運動が始まった。コロナ禍の期間をはさみ、昨年8月までに5万1千人を超える署名が集まったという。

 しかし、地元自治体を通じて内々に相談を受けた宮内庁の職員は、申し訳ないといったふうに口ごもりながらも、「こうしたものは受け取ることができないのです」と答えたという。


■ようやく設置されたエアコン

 「那須嚶鳴会」の相談を受けた地元選出の佐藤勉・衆院議員は、住民の思いを宮内庁側に伝えたという。

「わかったのは、宮内庁が地元の住民の心配をむげにしているわけではない、ということです。お使いになる皇室の方々は、心配する住民の気持ちをありがたく受け取っておられるようです」

 と、佐藤議員は話す。

「一方で、旧田母沢御用邸(栃木県日光市)が国の重要文化財に指定されたように、那須御用邸も由緒ある貴重な建造物です。おそらく老朽化した建物であってもなるべくそのままの形で大事になさりたい、という思いがあるようにも感じました」

 建て替えを求める住民の気持ちは理解できるが、いまは皇室の思いを尊重するのがよいのではないか、と佐藤議員は感じたという。


 とはいえ、「避暑地」の那須であっても最近の夏は、最高気温が30度前後になる日も珍しくない。昨年ようやく、エアコンが取り付けられたという。

 先の市村さんは、その話を聞いて胸をなでおろした。

「ひとまず、ご体調にかかわるエアコンの工事だけでもなされたのであれば、よかった。まだご不便はあると思いますが、ほっとしました」

 危険がなければできるだけあるがままで、という皇室の思いは、御用邸の様子にも表れている。

 宮内庁によれば、昨年から天皇ご一家が利用されている附属邸の事務棟建物にニホンミツバチが居ついたことから、「蜂の巣に注意」と注意喚起する看板が建物のそばに設置された。同じ時期、他の場所にあったスズメバチの巣は、さすがに撤去されたという。


■網戸補修に悩む長官

 とはいえ、御用邸の「質素さ」に驚かされるのは、今回に限ったことではない。

 平成の天皇ご一家に侍従として仕え、駐チュニジア、駐ラトビア特命全権大使などを歴任した中京大学の多賀敏行・客員教授も、侍従時代に那須御用邸の附属邸に滞在した経験がある。

 多賀さんによれば、当時の鎌倉節・宮内庁長官も、御用邸の老朽化と補修費用に頭を悩ませていたのか、こうこぼしていたという。

「陛下が那須の附属邸にお泊りになる。御用邸には虫がたくさんいるので、網戸を取り替えたかったが、その費用を確保するのが非常に難しい。やむを得ず大蔵省(現・財務省)とやり取りした……」

 宮内庁長官自らが大蔵省と交渉を行わざるをえなかった、といった口ぶりだったという。


 那須御用邸といえば昨夏、愛子さまが生まれる前に、天皇陛下と雅子さまが敷地内にテントを張って寝袋で一晩を過ごしたというエピソードを、おふたりが明かしている。

「平らなようで少し斜めな斜面になっていて、寝袋に入ったまま転がって……」

 そう陛下が明かすと、すぐに雅子さまが笑いながら、

「転がっていっちゃった」

 と付け加え、周りは笑いに包まれた。

 愛子さまが縁側で朝まで寝てしまったエピソードも、エアコンがない時期のことだった。

 身の回りに不便なことは一つもないように思い出を語ってきた、陛下と雅子さま、そして愛子さま。そんなご一家のお人柄が伝わってくるようだ。

(AERA dot.編集部・永井貴子)



(ヤフコメから)
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