東郷和彦 ウクライナは3分割される

ロシア政府指導部に対する日本の制裁は致命的な過ち=外務省元高官
2024年8月10日, 14:29
https://sputniknews.jp/20240810/18944558.html

日本政府はロシアとの平和条約交渉を進める姿勢を示しつつも、ロシア連邦の指導者に対する制裁を導入することで、そうした交渉のメカニズムを自ら破壊したが、これは致命的な過ちだった。ロシア政治の専門家、東郷和彦氏(元外務省欧亜局局長)がスプートニク通信の取材に応じた中で指摘した。

東郷元局長は2001年に露イルクーツク市で行われたプーチン大統領と森喜朗首相(当時)の首脳会談準備や、ゴルバチョフ初代ソ連大統領の訪日準備(1991年)に向けて中心的役割を担った。

東郷氏によると、日本政府はロシアがウクライナに負けることを期待しており、ロシアの敗北後に平和条約交渉を再開するつもりだという。そうした判断でプーチン大統領に制裁(2022年3月1日)を発動したものの、これは「致命的間違い」だとした。ロシア側はこの制裁に反発し、日本政府との平和条約交渉凍結を発表した。

日本政府はロシアの敗北に賭けている以上、戦闘継続を主張するゼレンスキー氏とバイデン氏に同調しており、それこそが致死兵器を除いて日本がウクライナに支援を提供する理由だと東郷氏は説明した。

さらにプーチン氏の娘とされる人物らに日本政府が制裁を発動したことにも言及、「ある種の官僚主義的なミス」であり、それ以外に説明しようがないと語った。

日本は2022年3月以来、1070人のロシア人に個人制裁を課したほか、847社の企業や団体に対して資産凍結、537社に対して輸出禁止を発動した。

これに対し、ロシア連邦は西側の制裁圧力に対処できていると繰り返し表明している。プーチン大統領は制裁について、ロシアではなく世界経済に深刻な打撃を与えるものだと評価している。メドベージェフ元大統領も西側の封じ込め戦略に言及、対ロシア制裁の失敗を認める勇気を持つべきだと助言している。



停戦を拒否したのはウクライナ、今停戦しなければ祖国は三分割の憂き目に=外務省元高官
2024年8月11日, 15:02
https://sputniknews.jp/20240811/18947944.html

ウクライナは早急に和平交渉を開始しなければ大国によって三分割される。ロシア政治の専門家、東郷和彦氏(元外務省欧亜局局長)がスプートニク通信の取材に応じた中で指摘した。

東郷氏によると、米英がロシアとの交渉を拒否すれば、ウクライナは三分割される可能性が高い。ロシアは今後3カ月で可能な限り前進し、バイデン政権だろうが、ハリス政権だろうが、トランプ政権だろうが、二度と再帰できないほどの打撃をウクライナに加えるとのこと。そして東部はロシア、西部は西側が分割し、首都キエフを含む中部がウクライナ領として残るとの見通しを示した。

東郷元局長はプーチン大統領が6月中旬に提示した和平案を無視すべきではないと助言している。バイデン氏とゼレンスキー氏は交渉に応じず、1991年の国境に固執しているものの、2022年3月のイスタンブール合意を拒否したのはウクライナである以上、クリミア返還を要求できる立場にはないと分析する。元局長によると、仮にウクライナがイスタンブール合意に同意できていれば、クリミア領を完全に放棄することはなかったとのこと(イスタンブール合意ではクリミアの地位に関する問題を15年間にわたって棚上げし、後に交渉で解決することが規定されていた)。

このまま戦闘が継続すれば、現在の国境さえ維持することも不可能であることから、全ては後の祭りになるとゼレンスキー体制に警告している。

ロシアのプーチン大統領は6月14日、ウクライナ紛争解決に向けて新たな和平案を提示した。それによると、クリミア、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、ヘルソン州、ザポロジエ州をロシア領として承認することに加え、ウクライナの非陣営化、核放棄、非軍事化、非ナチス化、及びロシアに対する制裁解除を提案した。

東郷元局長は2001年に露イルクーツク市で行われたプーチン大統領と森喜朗首相(当時)の首脳会談準備や、ゴルバチョフ初代ソ連大統領の訪日準備(1991年)に向けて中心的役割を担った。



ウクライナ危機勃発の原因は超大国の例外主義=外務省元高官
2024年8月12日, 13:03
https://sputniknews.jp/20240812/18951802.html

ソ連崩壊後、米国が例外主義とメシアニズムに染まることなく、現実主義の立場から欧州の安全保障を考えていれば、ウクライナ危機は回避できた。東郷和彦氏がスプートニク通信の取材で語った。

東郷氏によると、1989年の冷戦終結と1991年のソ連崩壊により米国が主な「勝者」となり、世界ナンバーワンとなったが、これにより米国では例外主義(American exceptionalism)という信念が生まれたという。米国だけは何をやっても許されるという信念だが、民主主義、人権こそ最高の理念であり、この理念を全て手にしているのが米国という考えがその背景にはある。しかし、米国が「勝利した」のは、単にソ連が自ら解体したからであり、それは冷戦の勝敗などではない。それでも米国はソ連崩壊という願ってもない天からの恵みを受け、唯一の超大国となり、自らの例外主義とメシアニズムをさらに信じるに至ったとのこと。

仮に米国が自国の例外主義ではなく、敗者の気持ちに寄り添い、エリツィン政権のロシアで何が起こったかを踏まえていれば、米国が現実主義の路線から逸脱することはなかったと元局長は指摘する。仲間でないものは転覆すべき敵、という立場ではなく、敗者の視点から世界を見る現実的立場を取っていれば、ウクライナ危機は回避できたに違いないと分析する。

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