愛子さま「お相手」極秘指令 『週刊文春』記事の羊頭狗肉 成城大教授・森暢平
愛子さま「お相手」極秘指令 『週刊文春』記事の羊頭狗肉 成城大教授・森暢平
1/20(月) 20:18配信
サンデー毎日×週刊エコノミストOnline
https://news.yahoo.co.jp/articles/ef9aee88fd8817dcc88916d7ecd246eb8f120547
◇社会学的皇室ウォッチング!/140 これでいいのか「旧宮家養子案」―第39弾―
愛子さまの「お相手」報道がまたぞろメディアを賑わしている。最も気になったのは『週刊文春』(1月2・9日新年特大号)のトップを飾った「悠仁さまを揺さぶる〝愛子天皇〟極秘計画」である。しかし、よく読むと「極秘計画」とは言えない内容で、羊頭狗肉と言われても仕方がない。(一部敬称略)
記事は、2016年当時の首相、安倍晋三が「愛子さまに相応しいY染色体を持つ旧皇族の青年を」と官房副長官、杉田和博に指示し、旧宮家の賀陽(かや)家の男子と愛子さまを縁組し、女性天皇誕生に向けた計画を立てていた――というものだ。
密命を受けた杉田が調査した結果、賀陽家に、愛子さまと6歳違い、4歳違いの兄弟がいることが「判明」したとしている。だが、賀陽家の祭祀(さいし)を継ぐ賀陽正憲(65)に2人の男子がいることは、以前にも報じられていることで、内閣官房が発見したことではない。
記事は、正憲が、宮内庁から外務省に出向していたこともあり、この件は杉田の手を離れ、外務省の管轄になったが、外務省としてうまくさばけず、「頓挫」したと書く。結局、杉田は賀陽家に接触しなかったと結論づけている。
記事を読んで、新春早々の「文春砲」だと考えた宮内庁関係者はいないであろう。そもそも、「極秘計画」であるのに、他省である外務省に「管轄が移った」ことが疑わしい。極秘なら内閣官房から外務省に知らせることさえないだろう。
保守派がもくろむ旧宮家復帰案の最大の弱点は、現天皇から血筋が離れており、継承の正統性が疑わしいことだ。その弱点を補うには、旧宮家の誰か(つまり、保守派が天皇家のY染色体を持つと信じる誰か)と、現在の天皇家の直系である愛子さまを縁組させるのは妙案である。
『週刊文春』の記事では、「安倍のブレーン」として麗澤大学教授の八木秀次が、「具体的な動きについてはわかりません」と前置きしながら、「たしかに安倍さんとは『愛子さまと旧皇族の男子が結婚するのが一番いいよね』という話をよくしていました」とコメントし、もっともらしさが増している。
◇願望と事実を混同 保守派のヨタ話
杉田が極秘に天皇ご夫妻に面会して賀陽家と接触する了解を得ていたとか、実は杉田は正憲と会っていて、縁組の話があれば検討するという感触を得ていたというのであれば、文春砲と呼ぶにふさわしいスクープである。話が「頓挫」したなら、本当にそうした話が動いていたことを実証する必要があるが、記事にはそれがない。
安倍が、保守派の取り巻きに「旧宮家にある男子と愛子さまが結婚したらいいよね」と話すことはあり得る。保守派の悲願である男系維持と直系継承を接合できるからである。しかし、天皇家に無断で、首相風情がこんな大胆な政略に走ることは常識から見てもあり得ない。記事で、官僚組織が動いた証拠は、検証不能な「事情を知る当時の政権中枢」の証言しかない。「極秘計画」でも「極秘指示」でもなく、保守派のヨタ話にしか読めない。願望と事実を混同してはいけない。
23年3月、一部メディアが、愛子さまの結婚相手として賀陽家の男子が浮上したと相次いで報じたことがあった。
最初は、『週刊女性』(23年3月7日号)の「愛子さま 旧宮家ご子息と御所で逢瀬」である。同誌は「賀陽」の名は出さなかったが、『女性セブン』(3月16日号)が、「愛子さま お相手最有力旧皇族男子は4才年上早稲田卒イケメン」が賀陽家の次男を特定し、「最有力」などと続いた。『女性セブン』は、官邸内の皇室制度検討チームが、賀陽家に「愛子さまとの〝将来〟」について、「極秘のヒアリング」を受けたなどと怪しい事実を書いている。
◇2年前「賀陽」を否定 根拠は片道の「出向」
私は本連載72回目(23年5月7・14日号)の「愛子さま『お相手』報道 スクープではなく臆測」でこれらの記事は「虚報」であると断じた。この時、私と同じく、賀陽家との縁組はないと他誌報道を否定したのは、ほかならぬ『週刊文春』であった。
『週刊文春』(23年4月20日号)は、皇室担当記者の「宮内庁幹部は一連の報道に呆れています。(略)賀陽家の次男と御所で面会しているという〝お見合い報道〟自体が信じがたい」というコメントを報道する。正憲は天皇陛下の学習院時代の同級である。2000年に信託銀行から宮内庁式部職に転職したが、間もなく外務省に「出向」し、そのまま宮内庁には戻らなかった。『週刊文春』の記事は、01年までの宮内庁長官、鎌倉節(さだめ)が、現天皇(以下、徳仁皇太子)を支えてほしいと頼んで宮内庁に来てもらったが、徳仁皇太子が東宮侍従になることに難色を示したと書く。そのうえで、その後、外務省に「出向」したことを見ても、徳仁皇太子が「(正憲を)傍に置いておきたいとお考えではないことが分かります」という記者の解説を紹介する。
長官が頼み込んで宮内庁に転職してもらったのに他省に「出向」し、そのまま戻らない事態は尋常ではない。何かがあったと勘ぐるのが自然である。『週刊文春』はその自然な見方に基づいて、「賀陽家から愛子さまのお相手が選ばれるというのは考えにくい」と断じた。それから2年。過去に書いたことを忘れたかのように、賀陽家の次男が愛子さまの「お相手」候補で、安倍官邸が動いたという虚報を報じるのはどうしたことか。
私は、『週刊文春』の皇室記事には一目置く。臆測ばかりの一部週刊誌メディアと異なり、プロがうなる記事が多い。ところが、今回はどうだろう。『週刊文春』にしては、軽率である。最近、『週刊文春』の皇室記事にはこの手の飛ばしが散見される。
嘘でも本当でも、もっともらしいストーリーが、ネット上のページビューを稼げる。しかし、情報のプロの目はごまかせない。宮内庁界隈(かいわい)を取材する者の多くは「最近の文春さんの皇室記事はどうしちゃったの」と囁(ささや)きあっている。本物の文春砲で挽回してほしい。
<サンデー毎日2月2日号(1月21日発売)より。以下次号>
■もり・ようへい
成城大文芸学部教授。1964年生まれ。博士。毎日新聞で皇室などを担当。CNN日本語サイト編集長、琉球新報米国駐在を経て、2017年から現職。著書に『天皇家の財布』(新潮新書)、『天皇家の恋愛』(中公新書)など
(ヤフコメから)


(5ちゃんから)



エピソードを紹介したら、ネット民が思い出してしまった(苦笑)。
1/20(月) 20:18配信
サンデー毎日×週刊エコノミストOnline
https://news.yahoo.co.jp/articles/ef9aee88fd8817dcc88916d7ecd246eb8f120547
◇社会学的皇室ウォッチング!/140 これでいいのか「旧宮家養子案」―第39弾―
愛子さまの「お相手」報道がまたぞろメディアを賑わしている。最も気になったのは『週刊文春』(1月2・9日新年特大号)のトップを飾った「悠仁さまを揺さぶる〝愛子天皇〟極秘計画」である。しかし、よく読むと「極秘計画」とは言えない内容で、羊頭狗肉と言われても仕方がない。(一部敬称略)
記事は、2016年当時の首相、安倍晋三が「愛子さまに相応しいY染色体を持つ旧皇族の青年を」と官房副長官、杉田和博に指示し、旧宮家の賀陽(かや)家の男子と愛子さまを縁組し、女性天皇誕生に向けた計画を立てていた――というものだ。
密命を受けた杉田が調査した結果、賀陽家に、愛子さまと6歳違い、4歳違いの兄弟がいることが「判明」したとしている。だが、賀陽家の祭祀(さいし)を継ぐ賀陽正憲(65)に2人の男子がいることは、以前にも報じられていることで、内閣官房が発見したことではない。
記事は、正憲が、宮内庁から外務省に出向していたこともあり、この件は杉田の手を離れ、外務省の管轄になったが、外務省としてうまくさばけず、「頓挫」したと書く。結局、杉田は賀陽家に接触しなかったと結論づけている。
記事を読んで、新春早々の「文春砲」だと考えた宮内庁関係者はいないであろう。そもそも、「極秘計画」であるのに、他省である外務省に「管轄が移った」ことが疑わしい。極秘なら内閣官房から外務省に知らせることさえないだろう。
保守派がもくろむ旧宮家復帰案の最大の弱点は、現天皇から血筋が離れており、継承の正統性が疑わしいことだ。その弱点を補うには、旧宮家の誰か(つまり、保守派が天皇家のY染色体を持つと信じる誰か)と、現在の天皇家の直系である愛子さまを縁組させるのは妙案である。
『週刊文春』の記事では、「安倍のブレーン」として麗澤大学教授の八木秀次が、「具体的な動きについてはわかりません」と前置きしながら、「たしかに安倍さんとは『愛子さまと旧皇族の男子が結婚するのが一番いいよね』という話をよくしていました」とコメントし、もっともらしさが増している。
◇願望と事実を混同 保守派のヨタ話
杉田が極秘に天皇ご夫妻に面会して賀陽家と接触する了解を得ていたとか、実は杉田は正憲と会っていて、縁組の話があれば検討するという感触を得ていたというのであれば、文春砲と呼ぶにふさわしいスクープである。話が「頓挫」したなら、本当にそうした話が動いていたことを実証する必要があるが、記事にはそれがない。
安倍が、保守派の取り巻きに「旧宮家にある男子と愛子さまが結婚したらいいよね」と話すことはあり得る。保守派の悲願である男系維持と直系継承を接合できるからである。しかし、天皇家に無断で、首相風情がこんな大胆な政略に走ることは常識から見てもあり得ない。記事で、官僚組織が動いた証拠は、検証不能な「事情を知る当時の政権中枢」の証言しかない。「極秘計画」でも「極秘指示」でもなく、保守派のヨタ話にしか読めない。願望と事実を混同してはいけない。
23年3月、一部メディアが、愛子さまの結婚相手として賀陽家の男子が浮上したと相次いで報じたことがあった。
最初は、『週刊女性』(23年3月7日号)の「愛子さま 旧宮家ご子息と御所で逢瀬」である。同誌は「賀陽」の名は出さなかったが、『女性セブン』(3月16日号)が、「愛子さま お相手最有力旧皇族男子は4才年上早稲田卒イケメン」が賀陽家の次男を特定し、「最有力」などと続いた。『女性セブン』は、官邸内の皇室制度検討チームが、賀陽家に「愛子さまとの〝将来〟」について、「極秘のヒアリング」を受けたなどと怪しい事実を書いている。
◇2年前「賀陽」を否定 根拠は片道の「出向」
私は本連載72回目(23年5月7・14日号)の「愛子さま『お相手』報道 スクープではなく臆測」でこれらの記事は「虚報」であると断じた。この時、私と同じく、賀陽家との縁組はないと他誌報道を否定したのは、ほかならぬ『週刊文春』であった。
『週刊文春』(23年4月20日号)は、皇室担当記者の「宮内庁幹部は一連の報道に呆れています。(略)賀陽家の次男と御所で面会しているという〝お見合い報道〟自体が信じがたい」というコメントを報道する。正憲は天皇陛下の学習院時代の同級である。2000年に信託銀行から宮内庁式部職に転職したが、間もなく外務省に「出向」し、そのまま宮内庁には戻らなかった。『週刊文春』の記事は、01年までの宮内庁長官、鎌倉節(さだめ)が、現天皇(以下、徳仁皇太子)を支えてほしいと頼んで宮内庁に来てもらったが、徳仁皇太子が東宮侍従になることに難色を示したと書く。そのうえで、その後、外務省に「出向」したことを見ても、徳仁皇太子が「(正憲を)傍に置いておきたいとお考えではないことが分かります」という記者の解説を紹介する。
長官が頼み込んで宮内庁に転職してもらったのに他省に「出向」し、そのまま戻らない事態は尋常ではない。何かがあったと勘ぐるのが自然である。『週刊文春』はその自然な見方に基づいて、「賀陽家から愛子さまのお相手が選ばれるというのは考えにくい」と断じた。それから2年。過去に書いたことを忘れたかのように、賀陽家の次男が愛子さまの「お相手」候補で、安倍官邸が動いたという虚報を報じるのはどうしたことか。
私は、『週刊文春』の皇室記事には一目置く。臆測ばかりの一部週刊誌メディアと異なり、プロがうなる記事が多い。ところが、今回はどうだろう。『週刊文春』にしては、軽率である。最近、『週刊文春』の皇室記事にはこの手の飛ばしが散見される。
嘘でも本当でも、もっともらしいストーリーが、ネット上のページビューを稼げる。しかし、情報のプロの目はごまかせない。宮内庁界隈(かいわい)を取材する者の多くは「最近の文春さんの皇室記事はどうしちゃったの」と囁(ささや)きあっている。本物の文春砲で挽回してほしい。
<サンデー毎日2月2日号(1月21日発売)より。以下次号>
■もり・ようへい
成城大文芸学部教授。1964年生まれ。博士。毎日新聞で皇室などを担当。CNN日本語サイト編集長、琉球新報米国駐在を経て、2017年から現職。著書に『天皇家の財布』(新潮新書)、『天皇家の恋愛』(中公新書)など
(ヤフコメから)


(5ちゃんから)



エピソードを紹介したら、ネット民が思い出してしまった(苦笑)。
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