トランプ・ネタニヤフ両氏の政治的窮地と野望が招く、イラン攻撃への不穏な軍事的道筋とMAGA内部の主導権争い Alastair Crooke イギリス人外交評論家 米国 イスラエル 汚職 逮捕 辞任要求
The precursors for war are in place. Iran is the peg to intense political jockeying to define the post-Trump future
Alastair Crooke
January 5, 2026
https://strategic-culture.su/news/2026/01/05/precursors-for-war-in-place-iran-peg-intense-political-jockeying-define-post-trump-future/
トランプ・ネタニヤフ両氏の政治的窮地と野望が招く、イラン攻撃への不穏な軍事的道筋とMAGA内部の主導権争い
アリステア・クルーク Alistair Crooke
2026年1月5日
https://strategic-culture.su/news/2026/01/05/precursors-for-war-in-place-iran-peg-intense-political-jockeying-define-post-trump-future/
トランプ・ネタニヤフ会談における開戦への公約
2025年12月30日、トランプ大統領はネタニヤフ首相とそのチームとの会談において、イランへの攻撃を公に約束しました。イランが弾道ミサイル計画を継続すれば「イエス(攻撃する)」、核開発に対しては「即座に」対応すると明言し、「地獄を味合わせてやる」と豪語しました。
この好戦的な姿勢とは対照的に、マー・ア・ラゴでの会談においてトランプ氏はネタニヤフ氏とイスラエルに対し、温かく、至れり尽くせりの賛辞を贈りました。公には、ネタニヤフ氏はイランへの攻撃および「ガザ・フェーズ2」に対するトランプ氏の支持を取り付けた形ですが、舞台裏では多くの詳細が定義されないまま、あるいは論争の火種として残されています。
イランを取り巻く不穏な予兆と情報戦
イランへのエスカレートする言辞は、テヘランにとっては予想通りのものでした。敵対行為の予兆は誰の目にも明らかです。ナラティブ(物語)の構築も始まっており、「何百ものアルカイダの潜伏細胞が惨劇を引き起こす準備を整えている」「アルカイダは25年間にわたりイランに安住の地を見出し、それがイスラム原理主義の拡大を加速させている」といった、MI5やMI6の潜入捜査官とされる人物による主張が流布されています。これに呼応するかのようにイランの通貨は暴落し、市民は路上で抗議活動を展開しています。
イスラエルの不可解な軍事的野心
この米イスラエルによる軍事主義の再燃の背景には何があるのでしょうか。トランプ氏が「地獄の門」を開くと脅す虚勢は見慣れたものですが、トランプ・ネタニヤフ両氏が新たな戦争に向けて足並みを揃えている兆候は確かです。
しかし、なぜネタニヤフ氏は軍事行動を選択するのでしょうか。イスラエルは、いわゆる「6月の12日間戦争」において、イランの洗練されたミサイル攻撃によって甚大な傷を負い、防空システムの不備も露呈しました。イランはそれ以来、次戦に備えて再武装と準備を進めています。イランとの戦争に伴う明らかな危険を考えれば、イスラエルが追求している道は一見、非合理に見えます。
ネタニヤフ氏を追い詰める「カタールゲート」と法的窮地
この非合理な道を説明するには背景が必要です。まず、ネタニヤフ氏は深刻な苦境に立たされています。これまで何度も政治的失脚を予言されながら、脱出王「Houdini フーディーニ」(ハンガリー出身のユダヤ奇術師)のごとく逃げ延びてきた彼ですが、今回はより深刻です。汚職事件が結審すれば、有罪判決は免れないというのが法曹界のコンセンサスです。
さらに追い打ちをかけているのが「カタールゲート」疑惑です。首相の直属スタッフ3名が、ガザ戦争中を含め過去数年にわたりカタールから報酬を得ていたという内容で、この事実関係自体は否定されていません。焦点は「ネタニヤフ氏がそれを知っていたのか」、そして「カタールは支払いの見返りに何を求めていたのか」という点です。後者については不明ですが、カタールにとっては、いざという時のために首相の側近を給与名簿に載せておくだけで十分だった可能性があります。
イスラエル国内でこの疑惑は爆発的なものとなり、ナフタリ・ベネット前首相やボギー・ヤアロン元国防相らによって「treason 反逆罪」という言葉が公然と使われています。また、ネタニヤフ一家のパームビーチ訪問の真の目的は、ガザ問題ではなく、トランプ氏に依頼してヘルツォグ大統領(恩赦をためらっているとされる)に恩赦や裁判中止を働きかけてもらうためだったのではないか、と冷ややかな見方をするイスラエル人もいます。
政治的「気球」としての戦争利用
ネタニヤフ氏にとって、戦争は法的紛糾や終わりの見えない戦争の泥沼から自身を浮上させ、2026年の総選挙に勝利するための民衆を扇動する「気球」を必要としています。イランの打倒は、イスラエル国内だけでなく、米連邦議会、ドナー、そして米政界を支配する「ユニパーティ(一党独裁的な二大政党制)」の両派から熱狂的に歓迎されることでしょう。
トランプ氏の計算とMAGA内部の亀裂
トランプ氏の計算はやや異なります。バイデン前大統領は、ネタニヤフ氏との公の場での争いを避ける原則を確立していましたが、それには軋轢も伴いました。一方、トランプ氏はミリアム・アデルソン氏のような熱烈なドナーや、マーク・レビン氏のような論客を疎んじることを極端に嫌います。
このトランプ氏の軌跡は、イスラエル支援を巡るMAGA(Make America Great Again)支持層の分裂という背景から理解できます。ガザでの女性や子供の犠牲という映像は、2024年のトランプ勝利を支えた重要な若者組織「Turning Point USA」を揺さぶりました。キリスト教的価値観を持ち、強力な票掘り起こし能力を持つこの運動が、現在のイスラエル政策に異を唱え始めているのです。
党主流派によるMAGA弱体化の策動
共和党の幹部や有力政治家、大ドナーからなる一部のグループは、MAGAが党の完全な支配権を握ることを阻止しようとしています。彼らは、草の根で拡大するこの「沈黙をやめた多数派」を飼い慣らそうと画策しています。
そこで意図的に投入されたのが、「ネタニヤフの政策を支持しない者は反ユダヤ主義であり、イスラエル嫌いだ」という楔(くさび)です。雇われたインフルエンサーたちが党内の亀裂を煽り、運動の弱体化を図っています。伝統的な共和党指導部は、再び主導権を取り戻したいと考えているのです。
2028年を見据えた権力闘争としての戦争
トランプ氏にとっての妥協案は、「イスラエル国家を支持しつつ、現在のネタニヤフ政権の政治を批判する」というスタンスです。これにより、中間選挙に向けてMAGAの結束を維持しようとしています。しかし、親イスラエルのドナー層やネタニヤフ氏は、イスラエルへの批判は即、反ユダヤ主義であると主張し、この二分法を認めません。
結局のところ、米イスラエルによる対イラン戦争は、単なる軍事的な合理性を超えた複数の次元で進行しています。トランプ陣営にとっては、誰がMAGAを掌握し、ポスト・トランプ時代を定義するのかという複雑なチェスのようなゲームです。イスラエルにおいても、来たるべき戦争というるつぼを通じて、どの派閥とドナーが勝利し、国家のあり方を定義するのかを競う盤面となっています。
こうした熱狂の中で、イスラエルや米国の職業軍人層が抱く疑念や懸念は、「チームの一員」ではないと見なされることを恐れる空気によって、かき消されようとしています。
大切なのは自分だけ。どこまでも利己主義です。揺さぶられているのはイランのハメネイ師とネタニヤフ、どちらでしょうか。
Alastair Crooke
January 5, 2026
https://strategic-culture.su/news/2026/01/05/precursors-for-war-in-place-iran-peg-intense-political-jockeying-define-post-trump-future/
トランプ・ネタニヤフ両氏の政治的窮地と野望が招く、イラン攻撃への不穏な軍事的道筋とMAGA内部の主導権争い
アリステア・クルーク Alistair Crooke
2026年1月5日
https://strategic-culture.su/news/2026/01/05/precursors-for-war-in-place-iran-peg-intense-political-jockeying-define-post-trump-future/
トランプ・ネタニヤフ会談における開戦への公約
2025年12月30日、トランプ大統領はネタニヤフ首相とそのチームとの会談において、イランへの攻撃を公に約束しました。イランが弾道ミサイル計画を継続すれば「イエス(攻撃する)」、核開発に対しては「即座に」対応すると明言し、「地獄を味合わせてやる」と豪語しました。
この好戦的な姿勢とは対照的に、マー・ア・ラゴでの会談においてトランプ氏はネタニヤフ氏とイスラエルに対し、温かく、至れり尽くせりの賛辞を贈りました。公には、ネタニヤフ氏はイランへの攻撃および「ガザ・フェーズ2」に対するトランプ氏の支持を取り付けた形ですが、舞台裏では多くの詳細が定義されないまま、あるいは論争の火種として残されています。
イランを取り巻く不穏な予兆と情報戦
イランへのエスカレートする言辞は、テヘランにとっては予想通りのものでした。敵対行為の予兆は誰の目にも明らかです。ナラティブ(物語)の構築も始まっており、「何百ものアルカイダの潜伏細胞が惨劇を引き起こす準備を整えている」「アルカイダは25年間にわたりイランに安住の地を見出し、それがイスラム原理主義の拡大を加速させている」といった、MI5やMI6の潜入捜査官とされる人物による主張が流布されています。これに呼応するかのようにイランの通貨は暴落し、市民は路上で抗議活動を展開しています。
イスラエルの不可解な軍事的野心
この米イスラエルによる軍事主義の再燃の背景には何があるのでしょうか。トランプ氏が「地獄の門」を開くと脅す虚勢は見慣れたものですが、トランプ・ネタニヤフ両氏が新たな戦争に向けて足並みを揃えている兆候は確かです。
しかし、なぜネタニヤフ氏は軍事行動を選択するのでしょうか。イスラエルは、いわゆる「6月の12日間戦争」において、イランの洗練されたミサイル攻撃によって甚大な傷を負い、防空システムの不備も露呈しました。イランはそれ以来、次戦に備えて再武装と準備を進めています。イランとの戦争に伴う明らかな危険を考えれば、イスラエルが追求している道は一見、非合理に見えます。
ネタニヤフ氏を追い詰める「カタールゲート」と法的窮地
この非合理な道を説明するには背景が必要です。まず、ネタニヤフ氏は深刻な苦境に立たされています。これまで何度も政治的失脚を予言されながら、脱出王「Houdini フーディーニ」(ハンガリー出身のユダヤ奇術師)のごとく逃げ延びてきた彼ですが、今回はより深刻です。汚職事件が結審すれば、有罪判決は免れないというのが法曹界のコンセンサスです。
さらに追い打ちをかけているのが「カタールゲート」疑惑です。首相の直属スタッフ3名が、ガザ戦争中を含め過去数年にわたりカタールから報酬を得ていたという内容で、この事実関係自体は否定されていません。焦点は「ネタニヤフ氏がそれを知っていたのか」、そして「カタールは支払いの見返りに何を求めていたのか」という点です。後者については不明ですが、カタールにとっては、いざという時のために首相の側近を給与名簿に載せておくだけで十分だった可能性があります。
イスラエル国内でこの疑惑は爆発的なものとなり、ナフタリ・ベネット前首相やボギー・ヤアロン元国防相らによって「treason 反逆罪」という言葉が公然と使われています。また、ネタニヤフ一家のパームビーチ訪問の真の目的は、ガザ問題ではなく、トランプ氏に依頼してヘルツォグ大統領(恩赦をためらっているとされる)に恩赦や裁判中止を働きかけてもらうためだったのではないか、と冷ややかな見方をするイスラエル人もいます。
政治的「気球」としての戦争利用
ネタニヤフ氏にとって、戦争は法的紛糾や終わりの見えない戦争の泥沼から自身を浮上させ、2026年の総選挙に勝利するための民衆を扇動する「気球」を必要としています。イランの打倒は、イスラエル国内だけでなく、米連邦議会、ドナー、そして米政界を支配する「ユニパーティ(一党独裁的な二大政党制)」の両派から熱狂的に歓迎されることでしょう。
トランプ氏の計算とMAGA内部の亀裂
トランプ氏の計算はやや異なります。バイデン前大統領は、ネタニヤフ氏との公の場での争いを避ける原則を確立していましたが、それには軋轢も伴いました。一方、トランプ氏はミリアム・アデルソン氏のような熱烈なドナーや、マーク・レビン氏のような論客を疎んじることを極端に嫌います。
このトランプ氏の軌跡は、イスラエル支援を巡るMAGA(Make America Great Again)支持層の分裂という背景から理解できます。ガザでの女性や子供の犠牲という映像は、2024年のトランプ勝利を支えた重要な若者組織「Turning Point USA」を揺さぶりました。キリスト教的価値観を持ち、強力な票掘り起こし能力を持つこの運動が、現在のイスラエル政策に異を唱え始めているのです。
党主流派によるMAGA弱体化の策動
共和党の幹部や有力政治家、大ドナーからなる一部のグループは、MAGAが党の完全な支配権を握ることを阻止しようとしています。彼らは、草の根で拡大するこの「沈黙をやめた多数派」を飼い慣らそうと画策しています。
そこで意図的に投入されたのが、「ネタニヤフの政策を支持しない者は反ユダヤ主義であり、イスラエル嫌いだ」という楔(くさび)です。雇われたインフルエンサーたちが党内の亀裂を煽り、運動の弱体化を図っています。伝統的な共和党指導部は、再び主導権を取り戻したいと考えているのです。
2028年を見据えた権力闘争としての戦争
トランプ氏にとっての妥協案は、「イスラエル国家を支持しつつ、現在のネタニヤフ政権の政治を批判する」というスタンスです。これにより、中間選挙に向けてMAGAの結束を維持しようとしています。しかし、親イスラエルのドナー層やネタニヤフ氏は、イスラエルへの批判は即、反ユダヤ主義であると主張し、この二分法を認めません。
結局のところ、米イスラエルによる対イラン戦争は、単なる軍事的な合理性を超えた複数の次元で進行しています。トランプ陣営にとっては、誰がMAGAを掌握し、ポスト・トランプ時代を定義するのかという複雑なチェスのようなゲームです。イスラエルにおいても、来たるべき戦争というるつぼを通じて、どの派閥とドナーが勝利し、国家のあり方を定義するのかを競う盤面となっています。
こうした熱狂の中で、イスラエルや米国の職業軍人層が抱く疑念や懸念は、「チームの一員」ではないと見なされることを恐れる空気によって、かき消されようとしています。
大切なのは自分だけ。どこまでも利己主義です。揺さぶられているのはイランのハメネイ師とネタニヤフ、どちらでしょうか。
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