日本 段ボール製ドローンの開発とスタートアップの模索

段ボール製ドローンを国防の現場へ、防衛省も注目する日本発スタートアップの挑戦
Pacifist Japan Is Boosting Its Spending on Defense Startups

低コストで量産可能、偵察や群攻撃などの任務への導入も想定される
政府は民間・防衛両分野で活用可能なデュアルユース製品開発を推進

Alastair Gale
2026年1月7日 at 7:00 JST
日本語(英語版の抜粋)
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-01-06/T3SKA1GOT0JK00
英語
https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-10-06/pacifist-japan-starts-investing-in-defense-startups
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(AI要約)
段ボール製ドローン開発プロジェクト
・製品: AirKamuy 150(防水加工段ボール製ドローン)
・企業: Airkamuy(エアカムイ)
・予算額: 総額1億円(2025年4月の資金調達および融資額)
・完成予定: 2026年(来春までには製品化見込みとの記述あり)

次期フリゲート艦建造プロジェクト
・製品: 大型護衛艦(フリゲート艦)
・企業: 三菱重工業(発注元:オーストラリア政府)
・予算額: 記事内に具体的な契約金額の記載なし
・完成予定: 記載なし

小型衛星再突入技術開発プロジェクト
・製品: 小型衛星(宇宙から地球への輸送サービス、極超音速兵器への防衛転用可能性)
・企業: エレベーションスペース
・予算額: 記載なし
・完成予定: 記載なし

海洋ドローン開発プロジェクト
・製品: 海洋ドローン
・企業: オーシャニック・コンステレーションズ
・予算額: 記載なし(VCのコーラル・キャピタルが出資)
・完成予定: 記載なし

省エネ型ダイヤモンド半導体開発プロジェクト
・製品: ダイヤモンド半導体(防衛用途への応用可能性)
・企業: 大熊ダイヤモンドデバイス
・予算額: 記載なし(VCのコーラル・キャピタルが出資)
・完成予定: 記載なし
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(本文開始)
低コスト量産型ドローンの開発と防衛省への導入展望
愛知県名古屋市の近郊。バイク用ヘルメットをかぶった山口拓海氏は、手にした横幅約1.8メートルの飛行機型段ボール製ドローンを勢いをつけて空中に投じた。ドローンは直後に落下した。

段ボール製ドローンを開発した同氏のスタートアップ企業「Airkamuy(エアカムイ)」では、こうした失敗にも慌てることはない。低コストで量量が可能だからだ。再び行った試験は順調に進んだ。ドローンは名古屋の主要空港近くにある人工島上空を飛行した後、無事に着陸。エンジニアらは飛行データを収集し、最終調整を行う。全てが順調に進めば、防衛省はこのドローンを導入する見込みだ。任務には偵察や複数の小型爆弾搭載機によるスウォーム(群れ)攻撃などが含まれる可能性がある。

日本の若手起業家が抱く安全保障への危機感
山口氏は多くの若者と同じように、平和主義の理想を掲げてきた日本を守るために、より積極的な役割を果たす必要があると感じているという。中国による台湾侵攻が懸念される上、不安定な北朝鮮や強硬姿勢のロシアからの脅威も増している。そういった問題に「囲まれているということに気付いている人は気付いてる」と山口氏は語った。

日本の防衛産業が直面する文化的・歴史的障壁
他の多くの国にとって、山口氏のスタートアップは珍しくないだろう。ウクライナ戦争でドローンが大きな成果を上げる中、ベンチャーキャピタルの資金がドローン関連に流入している。だが、リスク回避志向が強い日本では長年にわたりスタートアップが少ない上、防衛装備品輸出に対する厳しい規制など、防衛産業にはタブーが存在する。第2次世界大戦での敗戦後、日本では戦争放棄や戦力不保持などを唱えた「平和憲法」が米国主導で制定された。この憲法は一度も改正されることなく今日に至っている。

自衛隊のイメージと学術界の軍事研究拒否
日本は1970年代までに防衛組織を再構築し、現在ではアジア有数の規模と装備を誇る。しかし、自衛隊は、頻発する地震など自然災害の発生時に支援活動を行う組織というイメージが強い。自衛隊に防衛装備品を納入する日本企業は限られ、米国からも調達している。政府に提言や勧告を行う日本学術会議は2017年に発表した「軍事的安全保障研究に関する声明」で、軍事目的のための科学研究を行わない立場を改めて表明した。

高市政権による防衛力強化と憲法改正への動き
一方、世論調査では防衛力強化に対する国民の支持の高まりが示されている。高市早苗首相は、防衛費増額を主張するなど安全保障分野でタカ派だ。自衛隊の明記など、憲法改正にも取り組む考えを表明している。

防衛予算のGDP比2%引き上げと国内基盤の強化
政府は22年、国内総生産(GDP)の1%程度に抑えられてきた防衛費を、27年度までの5年間で2%へ引き上げる方針を示したが、高市氏は25年度中に実現する意向を表明した。日本は、安全保障条約を結ぶ唯一の同盟国である米国からも、防衛面で対米依存を減らすことを求められている。長距離ミサイルや衛星など新たな装備の導入のほか、国内防衛産業の基盤強化を後押しするため、多額の予算が計上されている。

安全保障技術研究推進制度への関心増大
防衛分野に応用可能な先進的な基礎研究を支援する安全保障技術研究推進制度への関心も高まっている。防衛装備庁による同制度の25年度予算額は114億円と規模は大きくないものの、民間企業からの応募件数は134件で、21年度の49件から増加した。

DARPAをモデルとした防衛イノベーションの新展開
24年10月には防衛イノベーション科学技術研究所が発足。新興技術を国家の安全保障強化に活用することを目的とした、米国防総省傘下の国防高等研究計画局(DARPA)などをモデルとした。防衛省もスタートアップとベンチャーキャピタル(VC)との橋渡しを支援する役割を担っている。

三菱重工による大型護衛艦の海外輸出契約
オーストラリア政府は昨年8月、次期フリゲート艦の建造について、三菱重工業を発注先に選定したと発表した。第2次世界大戦以降で日本が獲得した大型の完成装備品輸出契約としては2件目で、重要な節目となる。殺傷能力のある武器は防衛装備移転三原則に基づき輸出が制限されているが、共同開発・生産の対象であれば例外となり、今回はこのケースに該当するとして認められた。

日本のスタートアップ資金調達環境と投資制限の壁
こうした規制で想定される市場が限られることもあり、民間からの資金流入は相対的に乏しい。政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)によると、日本のスタートアップの資金調達総額は24年に7793億円(集計時点)と、米国の2.5%程度にとどまった。日本のVC業界は、大半が金融機関や大手企業の傘下にある企業で構成されている。多くのVCファンドでは、防衛関連技術に携わる企業への投資を制限する内部規定を設けている。

イノベーションにおける多額の費用と環境の脆弱性
上智大学の齊藤孝祐教授(国際政治学・安全保障論)は、「日本ではベンチャーキャピタルを取り巻く環境は弱い」と指摘。「だが、防衛分野のイノベーションには膨大な費用がかかる」と述べた。

デュアルユース(軍民両用)技術の開発推進
日本政府は、民間と防衛の両分野で利用可能なデュアルユース製品の開発を推進している。こうした製品には、自動車やミサイルの誘導を可能とする自律航行システムや、衣料や戦闘機に応用できる高強度繊維などの素材が含まれる可能性がある。

先端技術分野における防衛スタートアップの強み
東京に拠点を置くVCのコーラル・キャピタルは、デュアルユース企業2社に出資している。海洋ドローンを手がけるオーシャニック・コンステレーションズと、防衛用途にも応用可能な省エネ型ダイヤモンド半導体を製造する大熊ダイヤモンドデバイスだ。コーラルの最高経営責任者(CEO)で創業パートナーのジェームズ・ライニー氏は、「日本で防衛技術への理解を深めるには時間がかかることは承知している」とした上で、先端のエンジニアリングとテクノロジーという日本の強みは、防衛スタートアップ分野で優位に立つ要因になり得るとの見方を示した。

宇宙技術の防衛転用と国際的な連携
宇宙関連スタートアップのエレベーションスペースは、小型衛星による再突入技術を軸に宇宙から地球への輸送サービスを開発している。この技術は極超音速兵器への防衛手段として役立つ可能性がある。防衛大学校で航空宇宙工学を学んだ宮丸和成最高執行責任者(COO)は、「日本と同盟国は新たな空からの脅威に対応するため連携する必要がある」と指摘。同氏は、防衛省や欧州最大のミサイルメーカーであるフランスのMBDAミサイル・システムズ・サービシズに接触していることを明らかにした。

エアカムイ創業の経緯:銀行員から起業家へ
名古屋大学で航空工学を学んだエアカムイの山口氏は22年、みずほ銀行でスタートアップ向けの資金支援を行う部署に勤務していた。山岳救助におけるドローンの活用に情熱を注ぐ顧客から誘いを受け、北海道で開催されたコンテストに参加。山口氏はこの経験をきっかけに起業を決意したという。

人道支援から安全保障分野への事業拡大
エアカムイは当初、山岳地帯で行方不明者の捜索を支援するドローンの開発を目的に設立された。「カムイ」は主に北海道に住むアイヌ民族の言葉で「神」を意味し、社名にはドローンが遭難者を救うという理念も込められている。ドローン展示会での防衛省当局者との面談を機に、同社は民生分野の取り組みを維持しながら、安全保障分野にも事業を広げる方向へとかじを切った。

防衛ビジネス特有の資金調達における困難
エアカムイは昨年4月、日本国内の三つのファンドを引受先とした第三者割当増資に加え、民間銀行1行と日本政策金融公庫からの融資により、総額1億円の資金調達を実施したと発表。山口氏によると、アプローチ先の約3分の2に投資を断られ、中には防衛関連ビジネスへの投資を社内規定で制限していることを理由に挙げたところもあったという。

「AirKamuy 150」の特長:低コスト・高効率な設計
同社の主力ドローン「AirKamuy 150(エアカムイ150)」は防水加工した段ボール製で、低コストで大量生産ができるように設計されている。山口氏によると、価格は約30万円からとなる見込み。米軍などが使用する高性能偵察機の価格は数百万ドルに上る。このドローンは、板状に重ねた状態で通常の輸送用コンテナ1台に約500機収納できる。飛行時間は2時間余りと、大半のドローンよりもはるかに長い。山口氏は、防衛省との契約に向け協議を進めていると明らかにした。

無人アセット防衛能力強化への巨額予算
防衛省は昨年8月に示した26年度予算の概算要求で、ドローンを含む無人アセット防衛能力の強化に3128億円を計上した。国内外で調達を検討する。

失敗を糧にする開発姿勢と製品化への決意
飛行試験を終えた山口氏は、安全対策のために着用していたヘルメットを外した。「一番大切なのは、やはり諦めないことだ」と語り、「いろいろ失敗もするが、なぜ失敗したのかをしっかり見極めて修正していくという積み重ね」の重要性を強調した。開発には困難を伴うが、来春までには製品化を見込んでいるという。

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