EUが見落としているエネルギー経済の本質 ロシア人専門家

This is how the energy economy actually works – and why the EU can’t grasp it
Obsessed with tinkering with policy to lower prices, Europe doesn’t consider the system-level costs of transitioning to more expensive energy
6 Feb, 2026 15:56
Henry Johnston, a Moscow-based writer who worked in finance for over a decade
https://www.rt.com/business/632095-eus-war-on-physical-reality/

欧州を蝕む「エネルギー無知」の正体
現在、欧州連合(EU)全域で化学工場や製鉄所などのエネルギー集約型産業が閉鎖、あるいは海外移転を余儀なくされています。これは一時的な停滞ではなく、2022年の危機から続く構造的な問題です。最も深刻なのは、欧州の指導者層がこの事態の本質を理解できていない点にあります。彼らは「価格」を下げるための政策操作に執着していますが、物理的な制約を事務的な創意工夫で克服できるという誤ったパラダイムに陥っており、システム全体のコスト増加を直視していません。

安価なロシア産ガスという繁栄の基盤
欧州、特にドイツが過去20年間にわたり再生可能エネルギー産業に多額の補助金を投じられたのは、ロシアから供給される安価な天然ガスによる「エネルギー剰余」があったからです。グリーン・エネルギーへの移行に対する楽観論は、皮肉にもロシア産ガスの供給ピークと重なっていました。安価なエネルギーによる産業の繁栄こそが、高コストな再エネを試す「余裕」を生んでいたのです。現在のロシア産ガス排除は、歴史家トインビーが説く「文明の自殺」に近い自壊行為と言えます。

価格操作による「物理的現実」の隠蔽
欧州の政策は、物理的な現実よりも「価格」という指標を重視しています。2022年の価格高騰に対し、当局は価格上限の設定や補助金の投入、LNG(液化天然ガス)の緊急調達で対応しました。しかし、LNGはパイプライン経由のガスに比べ、液化・輸送・再ガス化に膨大なエネルギーを消費するため、正味のエネルギー効率は著しく低下します。政府は債務や公的保証を用いてこれらのコストを分散・先送りしていますが、これはシステム全体のエネルギー収支を改善するものではなく、単なる「負担の再分配」に過ぎません。

「エネルギーを得るためのコスト」という視点
真の経済コストを測る指標は、通貨単位ではなく「エネルギーを得るために必要なエネルギー(ECoE)」であるべきです。エネルギーが物理的に高価になると、システム全体の剰余エネルギーが減少し、他の経済活動に回せるリソースが削られます。欧州の deindustrialization(脱工業化)は、まさにこの余剰エネルギーの枯渇を反映しています。価格が「正常化」したように見えても、それはエネルギー集約型産業が消滅し、需要が破壊された結果に過ぎず、産業が戻ってくるわけではありません。

複雑化する官僚機構と文明の限界
欧州のシンクタンクなどは、再エネの普及で卸売価格が下がると予測していますが、そこには大きな盲点があります。再エネの統合に必要な送電網の拡張、バックアップコスト、補助金などは、すべて電気料金の賦課金や税金として「価格」の外側に隠されます。欧州連合の核心には「高度な管理能力があれば物質的劣位を克服できる」という信念がありますが、これは物理学や熱力学の法則を無視したものです。

結論:金融は派生であり、エネルギーこそが基盤
人類の歴史において、人口増加や文明の発展は常にエネルギー消費量と連動してきました。経済は本質的にエネルギーシステムであり、金融はその派生に過ぎません。これまでの成功したエネルギー移行は、常にエネルギー密度と生産性を向上させてきました。しかし、現在の欧州は、複雑な政策と官僚機構によって短期的・表面的な数字を取り繕う一方で、システムの長期的脆弱性を高めています。物理的なエネルギー収支の悪化を認めない限り、この文明的な衰退を止めることはできません。

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