サウジのレバノン政策とイラン戦の影響 宗派主義 スンニー派 シーア派

Riyadh does not use the "Sunni street" card: Syria first
Lina Fakhr al-Din, Political Correspondent
Friday, 03 April 2026

「シリア優先」を掲げるサウジアラビアのレバノン安定化戦略

サウジアラビアの戦略的沈黙とシリアへの集中
サウジアラビア(サウジ)は、レバノン国内に強力な影響力を行使できるツールを持ちながらも、現時点では「スンニー派のカード」を切って国内を緊張させる動きを控えている。サウジはイランのモハンマド・レザ・シェイバーニー大使追放を支持し、抵抗勢力(ヒズボラ)に対する政府決定に関与しているものの、レバノンの安定維持を優先している。この背景には、サウジにとってレバノンは二次的な問題であり、中心的な戦略目標は「シリア(シャーム)」にあるという認識がある。

シリアの「ステータスクオ」維持とレバノンの連動性
サウジがレバノンの安定を求める最大の理由は、レバノンの混乱がシリアの勢力均衡に悪影響を及ぼすことを恐れているためである。サウジの特使ヤジード・ビン・ファルハーンは、レバノンでの内部崩壊がシリアの宗派間対立を再燃させ、ひいてはサウジ国内にまで波及するリスクを指摘している。サウジは現在、ダマスカスのアフマド・アル=シャルア大統領体制下でシリアへの支配力を強めようとしており、イランやヒズボラがかつてのような影響力を回復することを阻止したい考えだ。そのため、サウジはシリア軍をレバノンの紛争に介入させないという合意を後押しし、ジョゼフ・アウン大統領、エマニュエル・マクロン仏大統領、シャルア大統領間の三者連絡を調整した。

対イラン戦争と湾岸諸国のジレンマ
米国・イスラエルによる対イラン戦争の行方が、今後のサウジの出方を左右する。もしサウジをはじめとする湾岸諸国が戦争に直接巻き込まれれば、レバノンでの現状維持を放棄し、シリア軍の介入を容認する可能性もある。

しかし、現状ではテヘラン側もサウジに対しては一定の配慮を見せている。米国が巨額の資金を投じてもイラン体制を打倒できていない現実を踏まえ、サウジが今後より現実的なアプローチに転じるかが注目される。特に、イランによる攻撃がUAE(アラブ首長国連邦)に集中し、サウジのアラムコ施設などが標的から外されている点は、両国間の微妙な距離感を示唆している。

UAEの凋落とサアド・ハリーリーの危機
今回の情勢下で最も政治的未来を危ぶまれているのが、サアド・ハリーリー元首相である。ハリーリーはUAEの支援による政界復帰を模索してきたが、UAEがイスラエルの諜報拠点を引き受け、ドナルド・トランプに対し対イラン戦争の費用負担を申し出るなど強硬姿勢を取った結果、イランからの報復攻撃に晒され、地域的な立場を弱めている。イラン体制が存続し、米国との妥協が成立すれば、UAEは地域最大の敗者となり、それに依存するハリーリーの復帰シナリオも崩壊することになる。

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